鶏卵(けいらん)は、ニワトリの卵である。生で、または加熱した料理とされる。単に「卵」と呼ぶ事が多く、殻を割った中身(溶く事が多い)を「溶き卵」と言う。
「玉子」と宛字されることもある。料理で単に「卵」と言う場合は鶏卵の無精卵を指すことが多い。 最初は「卵」という漢字が使われていたのだが「動物臭い」(この場合の【臭い】は印象を表す)や「生々しい」などの理由で「玉子」という漢字が新たに使われることになった。
鶏卵は栄養価が高く、特に良質な動物性タンパク質を豊富に含むほか、卵黄にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンEや、リン、鉄、亜鉛や銅といったミネラルが含まれている。また全卵において必須アミノ酸が散在するが、特に卵黄に多く含まれる。世界的にも動物性のタンパク質の摂取源として一般的な食材である。ベジタリアンにも、無精卵だけは動物を傷つけることなく入手できる食材として、食べてもよいとする主義もあり、中国の精進料理でも使われる例がある。また、割球の起こっていない無精卵は単細胞でありこの単体で1つの細胞である。
栄養バランスが良いことから完全栄養食品と言われる。しかし必要な栄養素のうち、ビタミンCや食物繊維、カルシウムなどは不足している。(※ただし酢やクエン酸などの有機酸に溶かす、砕いて粉末にするなどなんらかの方法で卵殻まで摂取するならばカルシウム不足はある程度解消される。例:上記の中国の精進料理の中で、少林寺拳法などでは粉末にして飲むほかそのまま卵殻を噛み砕いて摂取する修行法もある。また、香酢などの酢にも生卵をそのまま漬けて卵殻を溶かし、中身は肌や髪の美容に良いとして蛋白源として食べ、溶かした酢は料理に用いる。同様の家庭調理食品はビネガー・エッグとして欧米にも存在する)
卵の持つイメージについてや、卵にまつわることわざについては卵の項に詳しい説明があるのでそちらも参照されたい。
[編集] 鶏卵以外の食用卵の種類
日本においては、卵といえば、鶏卵を指すことが多く、一般に入手しやすい鳥類の卵としては他にウズラの卵ぐらいしかないが、中国ではアヒルの卵もごく一般的で、他にハトの卵もあり、用途に応じて使い分けられている。国や地域によってよく使われる卵の種類は異なり、カモ、ガチョウ、ダチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、キジ科、エミューなどさまざまな卵が使われる。
[編集] 構造と規格
鶏卵は卵殻、卵白、卵黄から成る。卵殻は主に炭酸カルシウムから成る多孔質の殻で、外部から酸素を取り込み、胚の呼吸によって生じた二酸化炭素を放出できるようになっている。卵殻の内側には卵殻膜と呼ばれる薄皮がある。
卵白は粘度の高い「濃厚卵白」と、粘度の低い「水様卵白」から成る。
卵黄はひも状の「カラザ」(卵帯)によって卵の中心に固定されている。カラザは日本語で「殻座」あるいは「殻鎖」と書かれることもあるが、実際はラテン語の「chalaza」の音写であり、漢字での表記は当て字。生食の際には「消化が悪い」等の理由で除去される場合もあるが、その成分は通常の卵白とほぼ同じであり、消化のスピードに留意するほどの違いはない。その内部には通常の卵白にはないシアル酸が豊富に含まれている。卵黄の中心付近には、直径5mm程度の「ラテブラ」(latebra)と呼ばれる組織がある。「ラテブラ」はゆで卵にしても完全には固まりきらないという性質がある。なお、卵黄は肉眼では液状のように見えるが、顕微鏡等で拡大すると「卵黄球」という粒状の物体が集まったもので出来ていることが分かる。加熱 した卵特有のわずかに粒立ったような舌触りやぽろぽろと崩れるさまは、この卵黄球によるものである(ただし卵黄球自体は卵生生物に共通するものであり鶏卵のみの特徴ではない)。卵黄球は衝撃に非常に弱い(10センチ程度の高さから落下しただけで潰れてしまう)ため、ショックを与えずに加熱調理するとほどけるようなふんわりとした食感の黄身に、逆にショックを与えるとねっとりとした食感の黄身になる。卵黄球の数はサイズの大小に関わらずおよそ180万とされている。
[編集] 構造の詳細
[編集] 卵殻部
卵の最外層を覆う、主に無機質から構成される層で、その両面に配置されるクチクラ層や卵殻膜を合わせ、400μm前後の厚さの層を形成する。さらに外層から以下の構造に分けられる。
- クチクラ層
- 厚さ10μm程度の、主にタンパク質から成る脆弱な層。簡単な洗浄や摩擦で失われる。
- 卵殻
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- スポンジ基質
- 有機物からなるスポンジ状の構造に無機質が沈着したもの。炭酸カルシウムを主成分とするが、最外層の部分ではマグネシウムやリン酸塩がやや増加し、卵殻強度を高めているといわれている。
- 乳頭突起
- 卵殻内面に認められる突起群。鶏卵管における卵殻形成過程の名残で、先端部は卵殻膜に食い込んでいる。
- 卵殻膜
- 厚さ70μm程度の、脂質や糖質を若干含む、主にタンパク質からなる格子状に組まれた繊維により構成される。卵殻膜はさらに50μm厚の6層から成る外層(外卵殻膜と呼ぶ)と、20μm厚の3層から成る内層(内卵殻膜と呼ぶ)に分かれ、外層と内層は気室の部分では別れて存在している。保湿性に優れている。
- 気孔
[編集] 卵白部
卵白部は、以下の部分からなる。
- 卵白
- ほとんどが水分から成り、糖鎖を持つタンパク質を含む。リゾチームを含み、弱い抗菌作用を持つ。
- 外水様卵白と内水様卵白
- 卵殻赤道部と卵黄部周辺に存在する比較的流動性の高い卵白。それぞれ卵白の1/4程度を構成する。
- 濃厚卵白
- 比較的粘性の高い卵白。卵白全体の1/2を占める。カラザと一体化し、卵黄を卵の中心に維持する役目も果たす。
- カラザ層
- 卵黄膜の外面を覆う、タンパク質から成る網目状の繊維から成る層で、卵黄極部では繊維が並行に配向し、カラザと連続している。
- カラザ
- 卵黄の極部から引き出されたカラザ層の延長部分。末端は濃厚タンパク質と一体化している。
これらの構造により、卵黄を、抗菌作用を持つ卵白の中心に位置させることで、微生物による汚染から守っている。 VF
[編集] 卵黄部
胚の成長における栄養供給を目的とした濃厚な部分。以下の部分に分かれる。
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